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このホームページは車内月刊誌プリーズをもとに制作されています。
 平野啓一郎 〜最新作が自信作です。 〜 

2007年3

 
―1999年の年明け早々、文学界に新しいニュースが駆け抜けた。前年下半期の芥川賞に、京大生・平野啓一郎氏の『日蝕』が選ばれたのだった。23歳での受賞は当時の史上最年少タイ、大学生の受賞は石原慎太郎氏、大江健三郎氏、村上龍氏に続く4人目。その早熟な才能は「三島由紀夫の再来」といわれ、文学界にフレッシュな風を巻き起こした。平野氏自身は、当時のことを次のように語る。

 「何年か若い受賞者が出ていなかったこともあって、結構マスコミに露出したということはあると思います。僕としては周りの友人たちが就職活動をしてるのを横目に小説を書いているのが、多少後ろめたい気持ちもありました。ですから受賞してから、仕事がやりやすくなりましたね。それまでは自称小説家ということをカミングアウトするのも恥ずかしかった」

―愛知県の生まれながら、2歳の時に家族で母親の実家に移り住んだ平野氏は、物心ついたころから高校卒業まで、最も多感な時期を北九州市で過ごした。

 「中学3年間は折尾駅から電車で通学していました。今でも実家に帰って折尾駅に寄ると、当時の通学風景とあまり変わっていませんね。名物のかしわ飯も、まだホームで売っているようですし」

―高校生の時には周りから学級委員に推されるタイプで、当時の同級生からは「ちょっと変わったヤツ」と見られていたという。

 「多少、言動にエキセントリックなところもあったんでしょうか。確かにあのころドストエフスキーなんて読んでいる高校生もあまりいませんでしたから。東京と違って暇をつぶす場所も少なかったので、本でも読んでいるしかなかったんです。当時はパソコンもインターネットもありませんでしたから」

―高校時代に何編かの小説を書くが、将来に対する確たるイメージを持たないまま京都大学法学部へ。入学と同時に、京都へと移り住む。

 「まだのどかな雰囲気を引きずっている時代で、自分でやりたいことを見つけないと、退屈で死にそうな毎日でした。ちょうどバブルが弾けて就職難の時期でもあり、これからどうなるんだろう? という漠然とした不安もありました。でも中途半端に職に就くのも嫌だったので、就職活動をする代わりに小説を書き始めたんです」

―職業として小説家を選んだ平野氏は、出版社に持ち込んだ最初の原稿がいきなり文芸誌に掲載され、芥川賞受賞というこれ以上ないデビューを飾る。以来、ほぼ年に一冊のペースで小説を発表。’04年には文化庁の文化交流使として1年間パリに滞在し、講演活動を行いながらヨーロッパ約30都市を歴訪。さらにジャズやウェブをテーマにした対談や建築雑誌の編集長を務めるなど、その活動範囲は旧来の小説家のイメージをはるかに超えている。氏の言葉を借りれば、ここ数年間は「文学というジャンルに引きこもらずに、積極的に畑違いの世界に出向いていくことも心がけていた」時期でもあった。

 「僕は小説家なので、あくまでも小説で評価されたいという思いはあります。書き続ける以上は常に最新作が自信作なので、できるだけ多くの人に読んでもらいたいですね」

―リアルな現代社会と最も密接にリンクしている作家である平野氏の作品は、最新作であるうちに読んでおくべきだ。今のところ、それは1月末に刊行された『あなたが、いなかった、あなた』である。

文=江月義憲

平野 啓一郎(ひらの けいいちろう)
1975年愛知県に生まれ、大学進学まで福岡県北九州市で過ごす。
'99年、京都大学在学中に文芸誌に投稿した『日蝕』で芥川賞を受賞。
その後も大長編『葬送』や4つの短編からなる『高瀬川』など次々に作品を発表し海外でも話題となる。
'07年1月末には新作『あなたが、いなかった、あなた』(新潮社)を刊行。
 
 
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