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 松本零士。 〜運命を決める旅立ち。〜 

2006年10

 

―東京都練馬区大泉学園駅近くにある松本零士さんの自宅兼アトリエで、玄関を開けるとまず出迎えてくれたのは”メーテル“と”森雪“の等身大フィギュアだった。どちらも松本作品を代表するヒロインである。

 「海外のアニメーターやミュージシャンたちから、ここ(大泉)に直接連絡がくるんですよ。彼らの間では『マツモトに会いたければオオイズミに行け』と言われているらしい」

―日本はもちろん、世界中のアーティストに大きな影響を与えた松本作品の多くは、ここから生まれた。そして、漫画家生活50年を迎えた今なお現役として、新たな松本ワールドといえる作品を描き続けている。
 松本さんは福岡県久留米市で生まれ、現在の北九州市で育った。パイロットだった父親の影響もあり、子どものころからメカやSF、ファンタジーに大いなる興味を抱いていた。


 「僕らが中学、高校のころの小倉はなかなか文化的な街でね。本屋に行くといろんな専門書が置いてあった。当時は米軍の基地もあってアメリカンコミックも手に入った。そんな環境の中で、小学生のころから漫画を描いていました」

―そう聞くと、どこにでもいる漫画好きの少年かと思うかもしれないが、松本さんの場合は高校生にして新聞に連載を持ち、原稿料を稼いでいた。15歳にしてプロの漫画家だったわけである。

 「初めて東京に行ったのは、高校の修学旅行の時。ついでに出版社に寄って、原稿料をもらいました。五千円くらいだったか、それを先生に預けると、ビックリしていましたね」

―その数年後。18歳になった松本さんは、トランク一つを抱えて夜汽車に乗って上京する。自らの運命を決める旅立ち。これが、後に松本作品を代表する漫画のモチーフとなる。

 「当時、小倉から東京まで蒸気機関車で丸24時間かかりました。とても寂しい一人旅でね。蒸気機関車が空を飛べたらいいのにとか、旅の道連れに美しい女性がいたらなぁ、なんてことを空想していました」

―上京して数年間は、貧しくも楽しいぼろアパート暮らし。そこでの生活が出世作『男おいどん』の下敷きとなり、大泉に移ってからは『宇宙戦艦ヤマト』でアニメーションの世界でも知られた存在に。そして、夜汽車で上京してから約20年の後、松本さんが描いた漫画『銀河鉄道999』はテレビアニメ、劇場用映画として公開され、空前の大ヒットとなった。

 「スリーナインを始めたころにアフリカを旅行して、そこでサバンナの雄大な自然を見て思ったんです。『この風景はオレが生まれるずっと前からここにある、オレが死んだ後もずっとここにある』。そう思うと、なんだか小さいことでクヨクヨ悩むのがバカバカしくなってね。それからですね、周りを気にせずに自由に描いていこうと考えるようになったのは」

―以来、『銀河鉄道999』はいまだ完結していない。松本さんの分身である主人公・星野鉄郎は、永遠の旅人として銀河の果てを目指すだろう。

文=江月義憲

松本零士(まつもと れいじ)
  1938年福岡県久留米市生まれ。
高校生の時に漫画家デビューを果たし、高校卒業後に上京。 少女漫画や戦記もの、SFなどさまざまなジャンルの作品を描く。
'72年『男おいどん』で「講談社出版文化賞」受賞。 その後の代表作に『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』など。
宝塚造形芸術大学教授、京都産業大学客員教授、 日本宇宙少年団理事長、日本中央青少年団体連絡協議会会長なども務める。
 
 
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