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このホームページは車内月刊誌プリーズをもとに制作されています。
 帰るべき場所がある。迎えてくれる人がいる。 〜森口博子〜 

2006年6

 
― 「帰ってきたとよ〜」。福岡に帰郷した森口博子さんは、サインの傍らに博多弁でそう書き添えた。帰りたいときに、帰るべき場所がある。自分を温かく迎えてくれる人がいる。彼女にとってそれは何物にも代え難い喜びであり、財産である。なぜなら、かつては帰りたくても、帰れないときがあったからだ。
 4歳のころから、将来は歌手になることを夢見ていた。

 「歌手になりたいじゃなく、歌手になるんだって決めていました。周りにずっとそう言い続けてきたから、家族や友達も、そうなるのが当たり前だと思っていました」

―小学校のころから歌のレッスンに通い、片っ端からオーディションを受けた。落ちても落ちても受け続け、ついに念願かなったのが高校2年の春。テレビ番組の全国大会で準優勝し、スカウトの目に留まった。

 「デビューが決まった時、高校の廊下で親友2人に打ち明けたんです。すると一瞬の沈黙があって、『おめでとうって言わないかんっちゃろうけど、素直におめでとうって言えん、でも夢が叶ったっちゃけん、やっぱおめでとうやね』って、泣き出したんです。私のことを本当に心配してくれていたんですね。私も涙が止まらなくなって、喜びと寂しさが入り交じった泣き声が、高校の廊下に響き渡っていました」

―スカウト後すぐにレコーディングに入った森口さんは、わずか3ヵ月後にはアイドル歌手としてデビューを果たす。曲は人気アニメの主題歌で、なかなかのヒットとなった。しかし、その後が続かなかった。彼女は、当時を「ヒマなアイドル時代」と回想する。

 「事務所に行っても全然お仕事がなくって、とにかくヒマでしたね。すると、いつの間にか事務所の組織図から私の名前が消えていたんです。『高校を卒業したら、あの子は福岡に帰せ』って言われて。冗談じゃない。あれだけ盛大に見送られて東京に出てきて、子どもの頃からの夢だった歌手にやっとなれたのに、今さら帰れるわけないじゃない。何でもしますから、事務所に置いてくださいってお願いしました」

―とにかく顔と名前を覚えてもらえるならと、どんな仕事でも引き受けた。すると、徐々にバラエティー番組からお呼びがかかるようになった。子どものころから憧れていた歌手のモノマネも追い風になった。いつしか、彼女の顔をテレビで見ない日がなくなった。「ヒマなアイドル」から一転して、今度は寝るヒマもない「バラドルの女王・森口博子」となった。

 「私は歌が歌いたかっただけなんです。不本意なこともあったけど、今考えるとすべてに意味があったと思っています。今、自分が好きな歌を歌うことができるのも、テレビというもう一つの表現の場があったおかげですから」

―歌手として安定した活動を続けると同時に、最近は女優として新しい活動の幅を広げている。この夏には故郷の「博多座」公演で、向田邦子原作の『阿修羅のごとく』に三女・滝子役として出演する。

 「このお芝居の初演は、東京で一人の観客として見たんです。四人姉妹の家族劇で、家族の絆って何?夫婦の愛って何?という、まさに私が自問自答しているテーマと同じでした。最初に見た時は正直、ネガティブな答えに辿り着いてしまったんですけど、あらためて脚本を読んでいくうちに家族の問題も、だんだんポジティブにとらえられるようになりました。クヨクヨ考えていても、いつまでたっても幸せになれないなって。今回の役は、本当にいいタイミングで神様がきっかけを与えてくれたんだなって思います」

―福岡に戻り、家族や友人と喋るときには、自然と博多弁が口をついてくる森口さん。故郷の街でリラックスした自然体で演じる役柄は、彼女自身の本当の姿でもある。

文=江月義憲

森口 博子(もりぐちひろこ)
  福岡市生まれ。
'85年、NHK「勝ち抜き歌謡天国」全国名人大会で準優勝し、アニメ「機動戦士Zガンダム」主題歌『水の星へ愛をこめて』で歌手デビュー。
'91年からNHK「紅白歌合戦」に6年連続出場。
'05年にはデビュー20周年コンサート『出逢ってくれてありがとう』を開催。
今年から野球クラブチーム「福岡BLOSSOMS」総監督に就任。
 
 
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