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このホームページは車内月刊誌プリーズをもとに制作されています。
 ありえないことが、起こりえる。 〜アビスパ福岡  松田 浩監督〜 

2006年3

 
―'05年11月23日。博多の森球技場に詰めかけた2万人を超えるサポーターの前で、アビスパ福岡は5年ぶりのJ1復帰を決めた。アビスパを率いて3年目、J1昇格がノルマといわれるプレッシャーの中で見事にその仕事をやってのけたのが松田浩監督。決して信念を曲げない采配ぶりは時に「頑固」とも評されるが、その実は「超」がつくほどポジティブ思考の人である。生まれついての楽天家ではない。人生における二つの大きな転機が、松田監督のサッカー人生を大きく変えたのだった。

 「高校の恩師にも勧められて、将来は高校の指導者になろうと思っていました。それが大学2年の時、突然監督に呼び出されて『ブラジルに留学しないか』と言われたんです」

―当時、日本とブラジルの交流を支援する団体がサッカー留学生を探しており、筑波大サッカー部員だった松田氏に白羽の矢が立ったのだ。

 「ブラジル留学で人生観が180度変わりました。例えば物を盗まれても、それは盗まれる方が悪いという考え方。日本ではありえないことが、向こうの常識なんですから。何でもアリなんだと思えば、生きていくのがラクになりましたね(笑)」

―人間として、サッカー選手としてたくましくなって帰国した松田氏は'85年ユニバーシアード日本代表に選ばれ、卒業後は当時日本リーグの強豪だった東洋工業(現サンフレッチェ広島)に入社。しかし、この後日本サッカー界は劇的な変革期を迎える。Jリーグの創設が決まり、参入を目指す各チームで再編が進む中、膝に故障を抱えていた松田氏は戦力外の通告を受ける。

 「そりゃ落胆しましたよ。あと1年やれたら、Jリーガーになれるんですから。でも、コーチとして残ってくれと言われたので、気持ちを切り替えて引き受けることにしました」

―すでにJリーグ参入が決まっていたチームはイギリスからバクスター監督を招き、松田氏はその下で通訳兼フィジカルコーチを務めた。バクスター監督が持ち込んだ戦術は当時の日本サッカー界にない斬新なもので、松田氏はそれを選手たちに伝えるために、誰よりもその戦術への理解を深めることになる。

 「フィジカルコーチの勉強を兼ねてリハビリを続けていたら膝の調子も良くなっていて、選手よりも戦術のことは理解している。それで、監督から復帰しろって勧められました。こっちは一度引退を決断した身ですから悩みましたが、やっぱりJリーグのユニフォームに袖を通したいという思いもありました。それで現役復帰を決断したんです」

― 一度引退した選手が、外国人監督との出会いによって現役復帰を果たす。まさに起死回生のストーリー。それを身をもって経験した松田氏は監督となった今でも、悪いことが起これば、次にいいことがあることを信じている。だからこそアビスパの監督に就任してからも、毎年前年より良い成績を上げながら、一つ一つの積み重ねによってチームをJ1復帰へと導くことができたのだ。

 「九州出身者として、地元のチームを率いてJ1で戦えるのは幸せなことだと思います。九州は人材の宝庫ですから、将来的には九州出身の選手だけでJ1の優勝を争えるようなチームを目指したいですね」

―J1復帰1年目の今年、決して楽なシーズンでないことは誰の目にも明らかだ。しかし、松田監督の頭の中は、常にポジティブであり続けるだろう。普通の常識ではありえないことが、起こりえる。それがサッカーであり、人生であるのだから。

文=江月義憲

松田 浩(まつだ ひろし)
  1960年長崎市生まれ。
筑波大学を卒業後、東洋工業に入社。
'85年にはユニバーシアード神戸大会日本代表に選ばれる。
'92年からJリーグのサンフレッチェ広島でプレーし、その後ヴィッセル神戸に移籍。引退後は同クラブでコーチ、監督を歴任。
'03年シーズンからアビスパ福岡監督に就任し、 3年目でチームをJ1復帰に導いた。
 
 
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