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このホームページは車内月刊誌プリーズをもとに制作されています。
一筋縄ではいかない人物。 〜イッセー尾形インタビュー〜

2005年8

 
―撮影中も、じっとしていない。椅子に座り、新幹線の座席で本を読んでいる人を演じはじめる。

 「こないださぁ、新幹線で代議士先生の一団と一緒になってさぁ。先生がトイレに立ち上がると、お付きの連中もサッと立ち上がって、後を付いていくのね」

―身ぶり手ぶりで、その状況を演じるイッセーさんに、スタジオ内は爆笑。カメラマンも背中をヒクヒクさせて、さぞかし手ぶれが心配だったに違いない。
 さまざまな職業や立場の人々を演じる一人芝居では、日本の演劇界の中でも他の追随を許さない。20年以上にわたって演じてきたキャラクターは数百人を超える。さぞかし、日ごろから人間観察に熱心かと思っていた。


 「人間観察は、一切しないんですよ。すべて自分の経験の中での記憶と、後は想像です。サラリーマンとか、バーテンダーとか、学校の先生とか、なんとなく漠然と知っている職業の人がいて、自分の記憶を元に再構成して、キャラクターを作っていくんです」

―たとえば「生物教師」というネタで演じる先生は、高校時代の恩師がモデルになっている。

 「もちろんご本人とは全然違いますよ。ただ、その先生のたたずまいとか、らい落で型破りな性格とかを思い出しながら、生徒を思うがゆえにトラブルに巻き込まれていく教師のシチュエーションを作り上げていくんです」

―イッセーさんの記憶を遡って(さかのぼって)いくと、生まれ故郷の福岡にたどり着く。何度か引っ越しを繰り返しながら小学校3年まで過ごした福岡の記憶は、モノクロ映画の断片のようだという。

 「家族で百道浜に海水浴に行ったことを憶えています。夏なのに、なぜか白黒の風景なんですね。今でも福岡の人の言葉を聞くと、懐かしくなります。僕も小学校のころは『〜たい』って、喋っていたんでしょうからね」

―今年、公共ホール演劇製作ネットワーク事業として採用された演劇ワークショップ「イッセー尾形のつくり方」は、全国8会場のうち3会場を九州で開催する。イッセーさんと演出家の森田雄三さんが1週間にわたって各地に滞在し、地元のフツーの人々と一緒になって稽古を行い、芝居を作り上げていくという試みだ。

 「稽古といっても発声練習とか、そういうことは一切やらないんですよ。普通に生活している人の現実を、舞台に乗せようというのが僕たちのやろうとしていることなんです。だから、芝居をしちゃいけないんです。ところが皆さん意外と役者さんで、つい演技しちゃうんですね。それを稽古の中で演出家の森田が、少しずつはぎ取っていく。そうやってはぎ取っていって、最後に残ったのがオリジナルな自分なんです。そのオリジナルとオリジナルが舞台でぶつかり合って、そこに何が生まれるのか。これが、一番スリリングなんです」

―では、今までに何百人ものキャラクターを演じてきたイッセーさんのオリジナル、“素”の尾形一成とはどんな人物なのか。

 「いろんな人物を演じてきましたが、その中にイッセー尾形という痕跡を残さないように演じてきたつもりです。だから、消去法でいくと僕が演じたこの人物ではない、あの人物でもない、のが“素”のイッセー尾形なんです。こういう言い方をすると、一筋縄ではいかない人物のようですが(笑)」

―“素”のイッセーさんに出会うには、ワークショップに参加してみるのが一番の近道だ。

文=江月義憲

イッセー尾形
  1952年福岡市生まれ。本名、尾形一成。
'71年大学受験に失敗した後、新宿の演劇学校で演出家・森田雄三氏と出会い、共に演劇活動を始める。'81年日本テレビ「お笑いスター誕生」で金賞受賞。 '82年から一人芝居シリーズの公演を開始。'94年NYで初の海外公演。 その後、ヨーロッパ各国でも公演を行い、海外でも高い評価を受ける。
 
 
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